イタリア旅日記 3
   シエナ(3・25)

今日も少し早起きです。せっかくだから、散歩に出てみました。
ローマのホテルは街中(テルミニ駅の近く)で、ざわざわとしていましたが、
ここは中心地から少し離れた丘の上の静かなホテルです。
朝、6時半過ぎ、まだ少し霧が出ていました。
近くを通る幹線道路沿いをとことこと歩きます。

こんな標識がありました。
なんだかかわいい。

小さな教会へ続く道
  (crick here)

ホテルの庭

1時間ほど歩き回ってから朝ごはん。
今日も甘いパンとカプチーノ、ハムとチーズ、オレンジジュースにヨーグルト。

ホテルから中心地まではバスを利用しました。
昨日一度乗ったから、乗り方は大丈夫。時間もしっかり確認してあります。
実は昨日、フロントでバス停を聞き、地図を頼りに探したのですが、
ちっとも見当たらなかったのです。
こうなったら聞いてみようと、庭仕事(というか、畑仕事)をしているおじいさんのところへ。
シニョーレは思いっきりイタリア語で、一生懸命説明してくれました。
人間、集中すればなんでもできる。分からないイタリア語でも、なんとか通じるものです。
無事バス停(フェルマータといいます)は見つかり、今度は親切なおばあさんに導かれて
街中まで行くことができました。
分からない時は聞く。徹底的にこの路線でした。みなさんご親切に、どうもありがとう!

日本ではあまりなじみのない糸杉が、トスカーナの象徴のように
あちらこちらに見えました。
古い石造りの小屋、刈り込まれたぶどうの木、小さな教会もありました。
ぶどう畑にはちゃんと番犬がいて、怪しい東洋人の親子に向かって
吠え立てます。
しっかり仕事をしていて、えらいえらい。でもちょっと恐いな。

シエナのドゥオーモ
  (crick here)

昨日は時間切れで入れなかったドゥオーモ。
建設には約200年も費やされたとか。
壮麗なファサードに、圧倒されます。
上部と下部の建設時期には、やはり100年くらいの隔たりが
あるのだそうです。
脇にある、白と黒の縞模様(の大理石?)でできた鐘楼は、
なぜか少しアラブ風。

中に入ると、薄暗さと冷たい空気、そして広い空間に、
キリスト教徒でなくても神妙な面持ちに。
教会のステンドグラスは本当に美しい。
いつまでも、見続けてしまいました。
異教徒だからでしょうか、正面の祭壇は、キリスト教の権力を
誇示するようで、息が止まりそうでした。
あまり写真をぱちぱちと撮るのもはばかられて(その割りに撮ってる
けど)、祭壇の写真は止めておきました。

中心の広い部屋の脇に「ピッコローミニ家の図書室」があり、
壁面いっぱいに「ピウス2世の生涯」というフレスコ画が描かれています。
その下のガラスケース内には、1400年代の「聖歌集」が飾られていました。(下の写真)
昔の楽譜、です。数百年を経て色褪せない彩色に驚きました。


丸窓の反対側はステンドグラス
   (crick here

これは天井です。
 (crick here)

お昼ごはんは、ドゥオーモ近くのオステリアに。
外席でシニョーレがひとり、とってもおいしそうにパスタを食べていたので、そこに決めました。
お店のお姉さんは愛想のいい人で、娘のほっぺたを片手ですりすり。
娘はサラミや生ハム、チーズのいっぱい乗った大きなピザを、
私はえびとトマトのパスタ(ガーリックが思いっきりきいていて、おいしい!)、
夫は三色のニョッキのチーズソースを。
帰りに、日本から持参した小さな折鶴を、チップと一緒にお姉さんに渡しました。
とてもよろこんでくれましたよ。

おなかもいっぱいになったことだし、もう少し観光を続けましょう。
ドゥオーモそばの「付属美術館」へ。
ここは、14世紀にさらに大規模なドゥオーモを建設しようと
したものの、財政難で挫折してしまったという建物で、
現在は彫刻、絵画など様々な美術品が置かれています。
個人的に印象に残ったのは、右の写真の「本」。
がっちりとした外側の表紙は、美しい工芸品のようです。
素材はなんだろう、金属のようにも木製のようにも見えました。
その上に、金や銀の装飾的な模様が入っています。
当時の本に対する価値観が垣間見えたような気がしました。

すばらしい美術品を見ながら階を上がって行くと、
なにやら通路が。
先ほど、この建物を下から見上げた時に、
ずいぶん高いところに人影が見えたので、あそこはなんだろうと
気になっていたのです。
うずまき階段(左の写真)を上っていきましょう。すれ違うのもドキドキの、
本当に幅の狭い階段です。
ここで落っこちたら、下までごろごろごろ…。
息を切らして登っていきます。
途中の窓から見える景色(右の写真)に、ちょっとわくわくします。

とうとう着いた!がんばって上って、本当に良かった。
すばらしい眺望でした。どんな言葉も、この風景の前には無力です。
シエナの街の、シエナ色の瓦屋根が広がっています。
写真を撮ろうにも、どこをどう切り取っていいのか分かりません。
今、この目に映るこの景色。それがすべてなのです。
一応写真をぱちぱち撮りましたが、やはり実際に見ていただく以外に、
このすばらしさはお伝えできないようです。
本当に、力不足でごめんなさい。

ふと、「この景色、あすこからここまで全部あたしのものだぞ」
(武田百合子『富士日記 下 8月5日』より 中公文庫)という一文を思い出しました。

360度見渡せる、シエナの街(click here)

ずっとずっといつまでも、この風景を眺めていたかったのですが、そろそろ下へ。
先ほどのぐるぐる階段を下りて(すれ違う人と出会わないように祈りながら)、
次に行ったのは国立絵画館。
こちらは、「シエナ派」と呼ばれる絵画を収蔵しています。
古くは12世紀から、16世紀の絵画が中心で、そのほとんどが宗教画。
「聖母子」や十字架にはりつけられたキリストをモチーフに、
色々な画家たちが描いた、同じ構図の絵がずらりと並んでいました。
100年違うと、描き方もずいぶん違うもので、近代に近づくにつれて、表情も柔らかく
ふっくらとしてきます。が、割合リアルな描写も多く、おどろおどろしいものも。
歩きつかれたことも重なって、娘は「もう歩けない!」と、とうとうギブアップ。
正直、私も疲れました。絵画館は途中でリタイア。

おみやげたち
(click here)

お茶を飲んで休憩してから、おみやげを探すことにしました。
「もう歩けない」と思っていたのに、おみやげとなると元気です。不思議だなぁ。
目的の一つ、蔵書票を探しに、紙製品を扱うお店へ。
八百屋さんでトマトやプラムも買ってみました。
夕飯はパンとチーズを買って、昨日の生ハムやオリーブなどと一緒にホテルで食べようと、
パン屋さんを探したのですが、そういうときに限って見つからないのはなぜでしょう?
でも、スーパーの袋らしきものを持っている人を時々見かけます。どこかにあるはず。

困り果てていたら、タクシーの運転手さんが「あそこにあるよ」と教えてくれました。
イタリアのスーパーマーケットは如何に、と興味津々。エスカレーターで下ります。
やはりチーズやハムの売り場は、見たこともない種類の様々な商品が並んでいました。
どれもおいしそう!夫が、フレッシュタイプの白いチーズと、青かびのチーズをチョイス。
皮のハードな小さめのパンを買い、アルミ箔のトレイやフォークを探していると、
娘が「あのおじさん、たまごっち持っているよ」と言うのです。えっ!たまごっち!?

娘はたまごっちを2つ持っていて、お世話をしなくてはと、イタリアまで持ってきていました。
娘の指さすほうを見ると、ほんとだ、少し頭の薄くなったひげもじゃらの(失礼)
シニョーレが、たまごっちを2つ、首から下げていたのです。
あわてて後を追いかけて話しかけると、むこうもびっくりした様子。
そして、たまごっちの本当の持ち主、ご自分の娘さんを呼んでくださいました。
イタリアの子どもたちは、どの子もみんな可愛らしくて、本当に天使のようですが、
このお嬢さんも、金髪のそれはかわいい女の子。
年齢も娘と1つ違いだそう。
そして、子どもの順応性には驚かされました。
言葉は通じなくても、日本でやるのと同じように、二人でさっそく通信を始めたのです。
(最近のたまごっちは、通信ができます。)
お互いに名前を教えあったり、折鶴と髪留めを交換したりと、小さな友情が芽生えて、
娘は大興奮、大満足。
デジカメで二人の写真を撮ったので、教えていただいたメールアドレスに
送ってあげることにしました。はたしてお返事は来るかな?

夜にそびえるマンジャの塔

くたくたになったけど、楽しい気持ちでタクシーに乗ってホテルに帰りました。
買ってきたチーズは、どちらも本当においしくて、そしてお値段も
日本では考えられないくらい安いのです。
生ハム、オリーブ、そして昨日飲めなかったテイニャネッロも、最高でした。
こうやって部屋でのんびり好きなものをつまめるのも、なかなかいいものです。
娘はもう夢の中。私たちはワインもまわって、しばらくおしゃべりしていました。

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